【ラグビーを読む】第4回 

『才能を解き放つ勝つメンタル ラグビー日本代表コーチが教える「強い心」の作り方』

デイビッド・ガルブレイス/坂間亮弘訳 マガジンハウス(2021年発行)

2022年8月2日執筆

 著者のデイビッド・ガルブレイスは、ラグビーの2019年ワールドカップ(W杯)で快進撃を見せた日本代表のメンタルコーチです。

 突然ですが、皆さんは「ライオン」ですか? それとも「羊」ですか?

 何を言っているんだ、と思われるかもしれません。ラグビー日本代表の選手は全員がライオンです。ここでいう「ライオン」と「羊」とは、マインドセットの事で「ライオン」はプレッシャーをものともせず勇気をもって戦うマインドセットです。反対に「羊」は臆病なマインドセットです。怖がってばかりでは何もできない。人は度胸をもって困難に立ち向かう「ライオンハート」が必要だとデイビッドは伝えています。

 とはいえ、選手だって人間です。自国開催のW杯となると、結果を求められ尋常じゃないプレッシャーに襲われます。キッカーは観客、選手の視線を一身に浴び、チームの命運を懸けたPGを蹴ります。W杯初戦のロシア戦、キッカーのSO田村優は極度の緊張に見舞われ、10日前から眠れていなかったと試合後に告白しました。

 デイビッドは「キックの目的はなんだ?」と田村に問いかけました。そして「結果を求めているのだろうが、それは違う。目的はキックすることだ。ただキックすればよいのだ」と伝えました。「成功しなければならない」というプレッシャーから解放された田村はその後の試合で大活躍を見せました。メンタルをいかにコントロールできるかが分かる良い例です。

 本書には、週間スケジュール表の作成や戦略プランの練り方、忍耐力養成法などラグビー日本代表も活用した実践的な対策がたくさん載っています。勉強や部活、あるいは仕事で重要な日を前にあなたはどう過ごしますか。参考になる点が本書にはたくさんあります。 

(江戸川大学マスコミ学科、織戸駿哉)